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漢字辞典に新しい波
 朝日新聞 (95.10.10)

朝日新聞 95.10.10 記事

 部首や画数で引く従来の漢和辞典とは異なる、ユニークな引き方の漢字辞典が登場している。パソコンやワープロで文章を書いていて漢字の読み方が分からず、漢和辞典を引こうとすると「紙の辞書」からざかっていることもあり戸惑う。それを補おうとする新型の漢字辞典の発案者は、医師、会社員ら、漢字研究などとは無縁な人たち。「ワープロで住所の入力に苦労した」経験などが出発点で「必要は発明の母」の産物だ。

 ワープロでやっかいなのは、人名、地名などの固有名詞に難しい専門用語。変換キーを何度もたたいたり、単漢字変換で多くの同音異義語から探したり。読み方が分からなければワープロ内蔵の辞書で部首や総画数から検索するなど、手間がかかる。その煩わしさからの解放をどの辞典もうたう。

読めないときは「ん」

 埼玉県大宮市で皮膚科の診療所を開く、医師の高田任康さん()は、自作の漢字索引辞書「漢ぺき君」(ソフトバンク)を「漢字文化の大革命」と自賛する。

 検索法は、やはり漢字を分解する発想。「栂」(つが)という字を電話で伝える時、「木」(きへん)に「母」(はは)というが、それぞれの読みの頭文字を取り「きは」が見出しになる。見出しは筆順で平仮名三文字まで。「謗」のように読めない部分がある場合は、「ん」を当て、「ごんべん」と「ん」と「ほう」で、「ごんほ」で引く。高田さんはこれを「読めないときの『ん』頼み」という。

 約十年前、ワープロで住所録を作ろうとした時、人名漢字の入力に手間取った。「弼」の字を自分なりに「ゆひゆ」と見出しをつけて、ワープロ内蔵の辞書に登録。次から「ゆひゆ」で変換すれば「弼」が出ることにヒントを得て、「漢字すべてにこのルールをあてはめたら」と作業を始めた。

 JIS第二水準までの六千三百五十五字の見出しをつけることに五年。そのチェックにさらに数年。のべ二十人のアルバイトを雇い、作業場代わりにホテルのツインルームを約二十ヶ月、借りた。「性能を調べるため」購入したワープロは約四十台。データ入力パソコン七台。そこまでやるのは「この検索法が一般化すれば、漢和辞典のスタイルがすべて変わる。漢字文化への挑戦です」。パソコン用のソフトも発売中、書籍は来春、別の版元から新版が出る。

専門出版社も早引きに注目

 漢和辞典の専門出版社もこのような新しい引き方に注目している。「漢ぺき君」には漢和辞典として定評のある「大漢語林」掲載ページが記載されている。
 「大漢語林」の版元、大修館書店の森田六郎・編集第一部長は「あのやりかたを権威づけたわけではない」としながらも次のようにいう。「漢字とコンピューターの関係を考える中で、『漢ぺき君』のやり方が目にとまった。大修館にとっても宣伝になるし、おもしろい早引きの発想なので協力した。わたしたちも新しい引き方を検討しているが、国語教育で漢字の成り立ちや構造を理解させる必要から部首や画数を教え続けていることもあり、一朝一夕にはいかない」


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